いよいよ出発
 時は世紀末
 私は就職して2年目のことでした。
 週末になると、大学在学中に購入したバイク(YAMAHA DT125R)で、
紀伊半島の林道を走っておりました。
 その頃、北海道に通い詰めていた先輩に、北海道の良さを吹き込まれておりました。
(洗脳ですね)
曰く、
 バイク乗りなら一度は北海道を走らないと」
 「北海道には大自然がある!」
 「北海道に行ったら
女の子にもてる!
 「!」
 「よしっ!北海道行きますよ!!」
 「よ〜し、良く言った!!!」
 「良くわかんないですけど、北海道って遠いですよね?」
 「ん、まあ遠いが、舞鶴からのフェリーに乗ったら寝てても着くぞ」
 「なるほど・・・で、何日くらい休みとったらいいですか?」
 「多ければ多いほどいいが・・・まあ最低二週間だな」
 「なるほど!」

緊張するなあ・・・
  翌日、出勤した私は上司のところへ行きました。

「あの〜お話があるんですが」

「ん、なんだ」

「お休みが欲しいんですが」

「いつだ」

「はい、6月16日から2週間ほど

/'           !   ━━┓┃┃
-‐'―ニ二二二二ニ>ヽ、    ┃   ━━━━━━━━
ァ   /,,ィ=-;;,,, , ,,_ ト-、 )    ┃               ┃┃┃
'   Y  ー==j 〈,,二,゙ !  )    。                  ┛
ゝ.  {、  - ,. ヾ "^ }  } ゚ 。
   )  ,. ‘-,,'   ≦ 三
ゞ, ∧ヾ  ゝ'゚       ≦ 三 ゚。 ゚
'=-/ ヽ゚ 。≧         三 ==-
/ |ヽ  \-ァ,          ≧=- 。
  ! \  イレ,、         >三  。゚ ・ ゚
  |   >≦`Vヾ        ヾ ≧
  〉 ,く 。゚ /。・イハ 、、     `ミ 。 ゚ 。 ・

お茶吹く上司の図

 「普通社会人はそんな休みは取らないぞ。どっか旅行にでも行くのか?」

 「はい、北海道にツーリングに行きます。先輩が二週間は必要だというので・・・」

 「先輩は働いてるのか?」

 「はい、もう10年働いてます」

 「そうか、でもしっかり働いてる先輩と、まだ駆け出しのおまえとでは立場が違うぞ」

 「はい、休んでも支障のない駆け出しのうちに行っておきたいなあ〜なんて」

 (・・・どうしても行く気か)

 「わかった、休みを認めよう。」

 「やった!」

 「でも、戻ってきたときに席があると思ったら駄目だぞ

 「(聞いてない)ありがとうございます!」

こうして北海道行きが決定したのでした・・・

乗船券
 有頂天の私は、北海道行きを職場の皆様に吹聴しまくりました。
 私を見つめる上司・先輩の視線は、いま思い出してみると生暖かいものでした(笑)
痛いヤツを見るような・・・
 それはさておき、そんなこんなで出発当日がやって来ました。
 ちなみに今回のツーリングまで泊まりツーリングなんかしたこともなく
1日最高300キロほどしか走ったこともありませんでした。
 しかもバイクの排気量は125CC。
高速道路にも乗れないので、下道を走って舞鶴を目指します。
 まだ見ぬ世界に行ける興奮よりも、心細さが勝ってましたね。
 国道26号線を北上している間も、何度も引き換えそうかと思いました。
 しかしもう休みを取ってしまってるし、行くしかないよ!
と自分を励ましていました。
 国道26号線は堺市内で阪神高速に接続しています。
当然私は側道に降りて中央環状線を左折。
大浜北町を右折して大阪市内を目指します。
 大和川を越えて大阪市内へ。徐々に交通量が増えていきます。
 難波まで来たとき、御堂筋線は一方通行だったことに気づきます。
 軽くパニック状態になりながら四つ橋筋へ。
しかし四つ橋辺りから大渋滞にはまりこみます。
 路肩走行しようにも、路肩は違法駐車の嵐。
おとなしく車の後ろを走るしかありません・・・
 結局桜橋辺りまで渋滞に巻き込まれていました。
 中央郵便局前を右折。次いで阪神前を左折して国道176号線に入ります。
 これでちょっと一安心。後はこの国道通り走っていけばいいはずです。
大和川を越えて淀川を渡るまで1時間かかってました。
(自宅から大和川まで2時間)
 来る前に地図で調べた限りでは最短ルートのはずだったのですが・・・
大阪市内の渋滞を知らなすぎましたね(笑)
 十三あたりでまた渋滞。池田市内でまた渋滞。
すり抜けで頑張ります。
 池田郵便局の前を通過して西本町で国道173号線に。
さらに国道423号との分岐点までやって来ました。
 ここで路肩にバイクを停めてもう一度ルート確認。
国道173号線を北上します。
 兵庫県をかすめて箕面の山奥へ。初めてみる街並みに感動します。
 天王峠の大きなカーブを楽しむと、そこはもう京都府。
国道173号線をひたすら北上し、綾部で国道27号線に合流します。
 夕暮れ時、ようやく舞鶴市街へ到着。
 近くにあった王将で晩ご飯を食べて、警察署裏にある田辺城を見に行きました。
この頃からちょっと城好きだったんですねえ(笑)
 警察署で道を聞いたところ、舞鶴は西舞鶴、中舞鶴、東舞鶴に分かれていて、
フェリー乗り場は東舞鶴にあるとのこと。
 もう着いたと思っていたので、軽くショックでした。
 で、国道27号線で東舞鶴に移動。
ようやくフェリーターミナルに着いたときには日も暮れていました。

初めて乗った長距離フェリーです
 旅行会社で購入していたクーポン券を乗船券に引き換えます。
で、自宅で心配しているであろう両親に、無事に舞鶴に到着したと電話します。
 しかしよく両親も北海道行きをOKしたよなあ・・・
オヤジは
「仕事は大丈夫なのか?」

「そんなに休んで首にならんのか?」
と、そっちを心配していたようですが。(笑)
 トレーラーの積み込みが終わってようやくバイクの乗船開始。
 乗船後はすぐにお風呂に入って寝てしまいました・・・
 翌朝、隣で寝ていたお兄さんと話をしました。
実家は魚屋さんなこと。
今度家業を継ぐこと。
一度継いでしまったら休みのない仕事だという事。
継ぐ前に休みを取って北海道をツーリングする事。
とか話してくれました。
元気でやってるんでしょうかねえ・・・
私は先輩仕込みの見所を説明していました。

初めての時計台
 翌々日の朝4:00。
 小樽港に入港しました。
 船内でみた天気予報では晴れだったのですが、この日は曇りでした。
 気温も20℃近くまで上がる予報で、普通の格好で下船したのですが、すぐに後悔しました。
 この日の気温はなんと10℃以下
 ジーンズの上からカッパを着込みますが、そんなもので防げる寒さでもなく。
 がたがた震えながら国道5号線を札幌に向かいます。
 札幌駅前を通過して時計台へ。
 牧場の中に時計台みたいなイメージがあったんですが、実物はビルの谷間に埋もれてました。(笑)
 でも感動して写真を何枚も撮ってますね。
 札幌からは国道275号線を北上。
 石狩川を越えた辺りから広がる田園風景に、ただ圧倒されます。
 「アンデスってこんな感じかな?」
あまりの広さに、昔見た「母を訪ねて三千里」を思い出してました。
 ゆけどもゆけども変わらない景色。
 ちっとも上がってこない気温。
 北海道、恐るべし。
 国道沿いの温度計は11℃を表示していました。
 私の地元では3月の気温です。
しかも先々日までは30℃近い場所に居たわけで。
 寒さがさらに身にしみます。
 鼻水がね、止まらないんです(笑)
それこそもう、2本のレールのようにね、
だらだらと口の中に入ってくるわけですよ。
 ヘルメットかぶってるから鼻もかめないし。
取りあえずそのまま。
 で、手袋も普通のしかない訳。
最悪
 コンビニで、台所仕事用のビニール手袋(厚手のヤツ)買って、
手袋の上から付けてみました。
 最初は良かったんですが・・・ナイロンだもんで、
蒸れる。
 余計に冷えちゃうんですよね・・・
 過酷、この旅過酷・・・
 情けない姿で北上を続けます。
 いや、北海道舐めてたわけではなく、先輩にもちゃんとアドバイス受けてたんですが・・・
やっぱり経験しないと分からない事ってあるんですよ。

暑寒湖
 雨竜町役場辺りで、道道432号線に左折します。
 暑寒湖を過ぎた辺りで人家はなくなり、道もダートと舗装路が交互に変わるようになります。
 こういう時は、オフ車が実力発揮しますね。 

尾白利加川
 尾白利加川沿いをひたすら走って行きます。

雨竜沼登山口
 道路は最後にダートになり、やがて終点に着きます。
 ここが雨竜沼の登山口になります。
 雨竜沼とは、暑寒別岳中腹に広がる高層湿原のこと。
 花の季節には高山植物の花々が咲き乱れてお花畑になるそうです。
 北の尾瀬とか呼ばれているそうですよ。
 管理棟で清掃協力金とかで200円払いました。入山届けに記入して登山を開始します。

残雪の残る渓流

 運動不足なもんで、息を切らしながら登っていきます。

でね、自分より10や20歳くらい上の人に抜かれていく訳です。

かなり情けないですよ・・・

 で、下着は綿だから、汗かくとぴったり張り付いて気持ち悪いし、

靴も運動靴だから歩きにくい。
 
 装備の重要さを痛感しましたねえ・・・

残雪残る沼入口付近
 ようやくきつい登りが終わって、なだらかになってきました。
 「もうすぐかな?」
 広い水面が見えて来ました。
 「これだな」

沼が見えてきた!

向こうに暑寒別岳が見えます。
 ゴールが見えたら心も足取りも軽くなってきました(笑)
 遊歩道に沿って歩いていきます。
 小さな沢を越えたところに湿原が広がっていました。

足取りも軽くなってきました。

雨竜沼湿原
 雨竜沼はまだまだ残雪が多く、水芭蕉しか咲いていませんでした。
 湿原の向こうには南暑寒岳や暑寒別岳が見えました。

水芭蕉が咲いていました。

風はとても冷たいです。
 湿原を吹き抜ける風はとても冷たかったですが、こちらは山登りで汗かきまくってますからね。
 心地よかったですよ〜

湿原を横切る遊歩道

記念撮影
(別人のように細いねえ・・・)
 他にも結構登山客がいまして、写真を撮っていただきました。
 別人のようにスリムですねえ・・・(笑)

展望台から雨竜沼を見る
 湿原の奥に小さな丘があって、そこに展望台がありました。
 そこで休憩していると、他の登山客の方から
「お弁当持ってきてないの?」
 と声がかかりました。
 なんと私は山に来るのに水しか持ってきていなかったのです。
 時刻はちょうどお昼時。
お腹が空いていました。
 「よかったらこれどうぞ」
 とおにぎり2コ恵んでいただきました。
ありがとうございます。
 北海道の人はいい人多いなあ・・・
 聞けばその方達は暑寒別岳を縦走して、増毛方面に下山するんだとか。
 お互いの無事を祈って分かれました。

もう一枚

国道39号線
 ぬかるむ道をせっせと下って登山口まで降りてきました。
 物陰で汗を拭きまして、長袖の下着とズボン下を履きました。
 これでようやく寒さがマシになりました。
この時、時刻は14:00過ぎ。
 ここからどうするか悩みましたが、層雲峡まで走って泊まることにしました。
 国道12号線に出て旭川市街へ。
 長袖の下着を着込んだものの、やっぱり寒い。
 おまけに15:00回るとさらに気温が下がってきました。
 仕方がないので、国道沿いにあったニチイで厚手のジャージを1000円で購入。
物陰でジーンズをジャージに履き替え、上からカッパを着込んで寒さをしのぎます。
 国道39号線で層雲峡へ。
 山間部に入るとさらに寒さがつのり、歯が合わなくなってきました。
 やっとの思いで層雲峡に到着。
 観光センターで宿一覧のパンフレットをもらって宿を探します。
銀泉閣という民宿に腰を落ち着けました。
 隣とはふすま一枚隔てただけの和室でしたが、
室内はとても暖かくてありがたかったです。
 「兄ちゃん寒かったろう。先にお風呂に入りよ。晩ご飯はその後してあげるから」
という宿の方の配慮に大感激
 温泉によ〜く入りまして、ようやく人心地つきました。
 テレビを見ながら晩ご飯。
ちょうどワールドカップ真っ盛り。
 ブラジル代表はレオナルドやドゥンガが活躍していた頃のお話でした。
to be continued・・・
2011.2.13作成
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